広告代理店から届いた見積書に「グロス」「ネット」と書かれていて、どちらが実際に払う金額なのか、グロスとネットの違いがよくわからないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
広告業界では、媒体に支払う広告費(ネット)と、代理店の手数料を含めた総額(グロス)を区別して取引します。ところが、同じ「手数料20%」でも計算方法が2通りあり、どちらを使うかで請求額が変わります。グロスとネットを取り違えると、予算オーバーや成果指標の計算ミスにつながります。
この記事では、グロスとネットの違いを、広告費の計算方法(内掛け・外掛け)・早見表・見積書の確認ポイント・CPAの計算や会計処理での注意点まで、広告主の立場で解説します。
代理店の見積書を正しく読み解き、予算の組み方や手数料の妥当性を自分で判断できるようになりますので、ぜひ参考にしてください。
本記事のまとめ:グロス ネット 違い
| グロスとネットの違いとは? | グロス・ネットの意味 広告業界でのグロスとネットの違い 広告以外の分野での意味の違い |
| グロスとネットの計算方法 | ネットからグロスを出す2つの方法(内掛け・外掛け) グロスからネットを出す方法 手数料率別の早見表 |
| グロス建て・ネット建ての使い分け | グロス建てが使われる場面 ネット建てが使われる場面 広告主はどちらで予算を伝えるべきか |
| グロス・ネットで間違えやすい注意点 | 見積書・請求書で確認すべき5項目 CPA・ROASはグロスとネットどちらで計算するか 消費税と会計処理での扱い |
| 代理店手数料の相場と費用の考え方 | 手数料率の目安と最低手数料 手数料以外にかかる費用 |
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グロスとネットの違いとは?

グロスとネットの違いは、「手数料などを含めた総額」か「手数料などを除いた正味の金額」かです。広告業界では、グロスは媒体費に代理店手数料を加えた広告主の支払総額、ネットは媒体に実際に支払われる広告費を指します。
ここでは、言葉の意味と、広告業界での使われ方、他の分野での意味の違いを整理します。
グロス・ネットの意味
グロス(gross)とは「差し引く前の総額」、ネット(net)とは「手数料や経費などを差し引いた後の正味の金額」のことです。
英語のgrossには「全体の・総計の」、netには「正味の・純粋な」という意味があります。どちらも業界によって「何を含めるか・何を差し引くか」が異なるため、取引の場面ごとに中身を確認することが大切です。
広告業界でのグロスとネットの違い
広告業界では、グロスは「媒体費+代理店手数料」の総額、ネットは「媒体に支払う広告費そのもの」を指します。
| 項目 | グロス | ネット |
| 意味 | 媒体費+代理店手数料の総額 | 媒体に支払う広告費(手数料を含まない) |
| 広告主から見ると | 代理店に支払う金額(税抜) | 実際に広告配信に使われる金額 |
| 例(手数料20%・内掛け) | 100万円 | 80万円 |
予算を「月100万円」と伝えたとき、それがグロスなら広告配信に使われるのは80万円前後です。ネットなら手数料を上乗せした120万〜125万円前後が請求されます(手数料20%の場合)。予算を伝えるときは、金額の後ろに必ず「グロスで」「ネットで」と添えてください。
広告以外の分野での意味の違い
グロスとネットは広告以外でも使われ、分野によって「何を差し引くか」が変わります。代表的な使われ方は次のとおりです。
| 分野 | グロス | ネット |
| 売上 | 総売上(返品・値引き前) | 純売上(返品・値引き後) |
| 利益 | 粗利益(売上−原価) | 純利益(経費・税金を差し引いた後) |
| 給与 | 額面(総支給額) | 手取り(税・社会保険料の控除後) |
| 不動産 | 表面利回り(経費を考慮しない) | 実質利回り(経費を差し引いた後) |
| 重量 | 総重量(包装込み) | 正味重量(中身のみ) |
社内の会議で「グロス」「ネット」という言葉を使う場合、経理部門は「売上・利益」の意味で、マーケティング部門は「広告費」の意味で理解していることがあります。部署をまたぐ資料では「グロス(手数料込み)」のように中身も併記すると、認識のずれを防げます。
グロスとネットの計算方法

広告費のグロスとネットを換算するときは、手数料率に加えて「内掛け」か「外掛け」かを確認する必要があります。同じ「手数料20%」でも、計算方法によって請求額が数万円単位で変わるためです。
ネットからグロスを出す2つの方法(内掛け・外掛け)
ネットからグロスを出す方法には、手数料率をグロスに対する割合とする「内掛け」と、ネットに対する割合とする「外掛け」の2つがあります。
| 計算方法 | 計算式 | 例:ネット100万円・手数料20% |
| 内掛け(グロスの20%が手数料) | グロス=ネット÷(1−手数料率) | 100万円÷0.8=125万円(手数料25万円) |
| 外掛け(ネットの20%が手数料) | グロス=ネット×(1+手数料率) | 100万円×1.2=120万円(手数料20万円) |
同じ「手数料20%」でも、内掛けは外掛けより手数料が5万円多くなります。広告業界では「グロス100に対してネット80」という内掛けの考え方がよく使われますが、代理店によって異なります。
「手数料20%」とだけ書かれた見積書は、内掛けか外掛けかで請求額が変わります。契約前に計算式を書面で確認してください。
確認するときは、「手数料率はグロスに対する割合ですか、ネットに対する割合ですか」と聞くと、相手にも意図が伝わりやすくなります。
グロスからネットを出す方法
グロスの予算からネット(実際に配信に使われる広告費)を出すときも、内掛けと外掛けで計算式が変わります。
- 内掛け:ネット=グロス×(1−手数料率) 例:100万円×0.8=80万円
- 外掛け:ネット=グロス÷(1+手数料率) 例:100万円÷1.2=約83万3,333円
社内で承認された予算は、多くの場合「会社として払える総額」、つまりグロスです。広告の管理画面に入力する日予算や月予算は、グロスではなくネットに換算した金額で設定してください。グロスのまま入力すると、手数料分だけ予算を超えて配信されてしまいます。
手数料率別の早見表
よく使われる手数料率15%・20%・25%で、グロスとネットを換算した早見表です。計算方法ごとの金額の差を確認できます。
| 手数料率 | ネット100万円のグロス(内掛け) | ネット100万円のグロス(外掛け) | グロス100万円のネット(内掛け) | グロス100万円のネット(外掛け) |
| 15% | 約117万6,471円 | 115万円 | 85万円 | 約86万9,565円 |
| 20% | 125万円 | 120万円 | 80万円 | 約83万3,333円 |
| 25% | 約133万3,333円 | 125万円 | 75万円 | 80万円 |
※金額はいずれも消費税抜き。1円未満は四捨五入しています。
手数料率が高いほど、内掛けと外掛けの差は大きくなります。たとえば手数料25%・ネット100万円では、計算方法の違いだけで約8万3,000円の差が出ます。年間で考えると100万円近い差になることもあるため、計算方法の確認は必須です。
グロス建て・ネット建ての使い分け

取引の基準をグロスにするかネットにするかは、媒体の種類や業界の慣習によって異なります。広告主としては、どちらの基準で見積もられているかを把握し、自社の予算の決め方に合わせて伝えることが大切です。
グロス建てが使われる場面
グロス建てとは、手数料を含めた総額を基準に価格を決める取引方法で、テレビ・新聞・雑誌などのマス広告や、掲載料金が決まっている純広告でよく使われます。
媒体があらかじめグロスの料金を提示し、代理店はその中から手数料を受け取る形です。広告主にとっては、支払う総額が最初から決まっていて予算を管理しやすいのが利点です。
一方で、総額の中にいくら手数料が含まれているかが見えにくくなります。グロス建ての見積もりでも、「うち媒体費(ネット)はいくらか」を確認しておくと、他社の提案と比べやすくなります。
ネット建てが使われる場面
ネット建てとは、媒体費(ネット)を基準にし、そこに代理店手数料を上乗せして請求する取引方法で、リスティング広告やSNS広告などの運用型広告でよく使われます。
運用型広告は、クリック数や表示回数に応じて実際に使われた広告費が月ごとに変わります。そのため、「実際に使った媒体費+その◯%の手数料」で請求するほうが計算しやすいためです。
- メリット:媒体に支払った金額と手数料の内訳がはっきりする
- 注意点:配信量が増えると、手数料も同じ割合で増える
リスティング広告の費用と手数料の内訳は、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:リスティング広告の費用相場|業種別CPC・CPAと運用代行費【2026年版】
広告主はどちらで予算を伝えるべきか
広告主が予算を伝えるときは、社内で決まっている予算の性質に合わせて「グロスで◯円」か「ネットで◯円」かを明示するのが基本です。
| 支払総額の上限が決まっている | 「グロスで月100万円(手数料・税抜)」と伝える |
| 配信に使う広告費を確保したい | 「ネットで月80万円、手数料は別途」と伝える |
| 複数の代理店を比較する | 全社にネットの同じ金額で見積もりを依頼し、手数料を並べて比べる |
そのまま使える依頼文の例は「媒体費(ネット)月80万円を想定しています。手数料率と計算方法(内掛け・外掛け)、最低手数料の有無をあわせてお知らせください」です。相見積もりは必ずネットの金額をそろえて依頼すると、手数料の高い・安いを正しく比べられます。
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グロス・ネットで間違えやすい注意点

グロスとネットの取り違えは、見積もりの段階だけでなく、成果の評価や会計処理でも起こります。特に、CPAなどの指標をどちらの金額で計算するかは、社内で統一しておかないと判断を誤る原因になります。
見積書・請求書で確認すべき5項目
見積書や請求書では、「どの金額がグロスで、どの金額がネットか」を5つの項目でチェックします。
- 金額の基準:記載された金額がグロスかネットか
- 手数料率と計算方法:手数料率は何%か、内掛けか外掛けか
- 最低手数料:広告費が少ない月でも請求される下限額があるか
- 手数料以外の費用:初期費用・バナー制作費・レポート費などが別にかかるか
- 消費税:税抜か税込か
請求書を受け取ったら、広告の管理画面で確認できる実際の利用額(ネット)と、請求書のネット金額が一致しているかを毎月照合してください。
CPA・ROASはグロスとネットどちらで計算するか
CPA(顧客獲得単価)やROAS(広告費用対効果)は、広告の管理画面ではネットで表示されるため、手数料を含めた実質的な費用対効果を見るにはグロスで計算し直す必要があります。
| ネットCPA | 媒体費80万円÷40件=2万円(管理画面上の数値) |
| グロスCPA | 支払総額100万円÷40件=2万5,000円(実際の獲得コスト) |
管理画面のCPAが目標の2万円以内でも、手数料を含めると2万5,000円になり、採算が合っていないことがあります。目標CPAを設定するときは「グロスで何円以内か」を決め、管理画面の目標値はネットに換算して設定してください。
消費税と会計処理での扱い
広告費の請求では、グロス(またはネット+手数料)に消費税が加算されるのが一般的で、会計上も「総額」と「純額」のどちらで計上するかという考え方があります。
企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」では、取引の「本人」にあたる場合は対価の総額を、「代理人」にあたる場合は手数料の純額を収益として計上します※1。この基準は2021年4月1日以後に始まる事業年度から、上場会社などに強制適用されています※1。
広告主の立場で直接影響することは多くありません。ただし、代理店の売上の計上方法によって、請求書の書き方(媒体費と手数料を分けるか)が変わることがあります。経理処理で迷う場合は、自社の経理担当者や税理士に確認してください。
代理店手数料の相場と費用の考え方

運用型広告の代理店手数料は、広告費(ネット)の20%前後が一般的な目安です。ただし、最低手数料や手数料以外の費用によって、実際の負担率は大きく変わります。
手数料率の目安と最低手数料
運用型広告の代理店手数料は、広告費の20%前後が一般的な目安で、多くの代理店が10〜30%の範囲で設定しています。
| 料率型 | 広告費の20%前後(10〜30%程度) |
| 最低手数料 | 月5万〜10万円程度を設定する代理店が多い |
| 固定報酬型 | 広告費にかかわらず月額◯万円 |
| 成果報酬型 | 獲得件数や売上に応じて報酬が発生 |
※上記はいずれも業界で一般的に使われている目安であり、代理店や支援範囲によって異なります。
広告費が少ない場合は、最低手数料によって実質の手数料率が上がります。たとえば広告費(ネット)20万円で最低手数料10万円なら、実質の手数料率は50%です。広告費が月30万円以下の場合は、料率より最低手数料の金額を重視して比べることが大切です。
成果報酬型の仕組みや代理店の選び方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:成果報酬型リスティング広告とは?メリット・デメリットと代理店の選び方
関連記事:リスティング広告代理店おすすめ17選を比較|費用相場・実績・失敗しない選び方まで
手数料以外にかかる費用
広告の総費用は、グロス(媒体費+手数料)だけでなく、初期費用・制作費・計測環境の構築費などを含めて考える必要があります。
- 初期費用:アカウント設計・初期設定(0〜10万円程度)
- クリエイティブ制作費:バナー1点1万〜3万円程度、動画はさらに高額
- LP制作費:数十万円程度から
- 計測環境の構築費:タグ設定・GA4設定(5万〜30万円程度)
※上記はいずれも一般的な目安です。
代理店を比較するときは「グロス+その他費用」の年間総額で並べると、手数料率だけでは見えない差がわかります。SNS広告の代理店の費用相場は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:SNS広告代理店おすすめ16選|費用相場と失敗しない選び方
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グロスとネットの違いに関するよくある質問

Q.広告費のグロスとネットはどちらが高いですか?
グロスはネットに代理店手数料を加えた金額なので、同じ取引ならグロスのほうが高くなります。
たとえば手数料20%(内掛け)の場合、ネット80万円に対してグロスは100万円です。広告主が代理店に支払うのはグロス、実際に広告配信に使われるのはネットです。
予算を伝えるときに「どちらの金額か」を明示しないと、想定より配信量が少なくなったり、請求額が予算を超えたりします。
Q.グロス建てとネット建てはどちらが広告主に有利ですか?
どちらが有利というより、手数料の内訳が見えるかどうかと、自社の予算の決め方に合っているかで選ぶのが基本です。
ネット建ては媒体費と手数料が分かれているため、内訳を把握しやすい方法です。グロス建ては支払総額が決まっているため、予算を管理しやすい方法です。
どちらの場合も、手数料率・計算方法(内掛け・外掛け)・最低手数料を確認すれば、実質的な負担を比べられます。
Q.手数料20%の場合、ネットからグロスはどう計算しますか?
内掛けなら「ネット÷0.8」、外掛けなら「ネット×1.2」で計算します。
ネット100万円の場合、内掛けではグロス125万円(手数料25万円)、外掛けではグロス120万円(手数料20万円)になります。
同じ「手数料20%」でも手数料額が変わるため、代理店にどちらの計算方法かを必ず確認してください。
Q.管理画面のCPAとグロスのCPAが違うのはなぜですか?
広告の管理画面のCPAは媒体費(ネット)で計算されており、代理店手数料が含まれていないためです。
手数料20%(内掛け)の場合、グロスのCPAは管理画面のCPAの1.25倍になります。管理画面上は目標を達成していても、手数料を含めると採算が合わないことがあります。
事業の採算を判断するときは、グロスのCPAで評価し、管理画面の目標値はネットに換算して設定してください。
Q.代理店の手数料は妥当ですか?相談して確認できますか?
手数料の妥当性は、料率だけでなく、最低手数料・計算方法・支援の範囲をあわせて比べることで判断できます。
同じ手数料20%でも、月次レポートだけの代理店と、クリエイティブ制作やLP改善まで行う代理店では、支払う価値が大きく変わります。
判断に迷う場合は、デジマ部の無料相談で現在の見積書や広告費の状況をお伺いし、手数料や運用体制が適正かをセカンドオピニオンとして整理することもできます。
まとめ|グロスとネットは「金額の基準」と「計算方法」をセットで確認しよう
グロスとネットの違いは、手数料などを含めた総額か、差し引いた後の正味の金額かです。広告業界では、グロスは媒体費に代理店手数料を加えた広告主の支払総額、ネットは媒体に実際に支払われる広告費を指します。
ネットからグロスを出す方法には、内掛け(ネット÷(1−手数料率))と外掛け(ネット×(1+手数料率))の2つがあります。同じ手数料率でも請求額が変わるため、計算方法の確認が欠かせません。
また、広告の管理画面のCPAはネットで表示されるため、事業の採算はグロスで判断する必要があります。見積書では、金額の基準・手数料率と計算方法・最低手数料・その他の費用・消費税の5項目を確認しましょう。
実行順序は、①社内予算がグロスかネットかを決める→②代理店に手数料率と計算方法(内掛け・外掛け)を確認する→③管理画面の予算と目標CPAをネットに換算して設定する→④毎月、請求書のネット金額と管理画面の利用額を照合する、の4段階です。この記事で紹介した方法を参考に、できることから実践してみてください。
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【出典】
- ※1 第2回 『代理人取引』の連結への影響を考察する|TKC(企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」で、本人は総額、代理人は純額で収益を認識。2021年4月1日以後開始の事業年度から上場会社等に強制適用)
※上記以外の数値は業界で一般的に使われている目安値、または本文中の計算例であり、特定の調査に基づく確定値ではありません。



