「2026年までに、従来型検索エンジンのボリュームは25%減少する」。 米国の調査会社Gartnerが発表したこの衝撃的な予測を、対岸の火事だと思っていませんか?
「日本はまだGoogle検索が主流だ」──そんな常識が、今まさに崩れ去ろうとしています。
株式会社シード(運営:デジマ部)が1,504人を対象に「AIの台頭における検索への影響」についてモニター調査を実施したところ、「生成AI利用者の約4割が、検索エンジンの利用回数を減らしている」という事実が判明しました。
本記事では、単なる利用率の推移だけでなく、「ユーザーがなぜAIを選ぶのか」「Webサイトを見なくなったユーザーはどこで意思決定をしているのか」を深掘りします。最新データと海外トレンドを交え、Google一強時代の終焉と、来るべき「AIO(AI Overview)/ GEO(Generative Engine Optimization)」時代に向けた生存戦略を徹底解説します。
【調査概要】
調査対象:日本在住の10代~70代以上の男女
調査期間:2025年10月28日~2025年11月6日
調査機関:株式会社シード(自社調査)
調査方法:インターネットによる回答
有効回答数:1,504人
回答者の年代:10代 6.4%/ 20代 13.8%/30代 15.6%/40代 20.1%/50代 18.2%/60代 16.8%/70代以上 9.1%
1. データが示す「検索離れ」の波:米国で起きた現象が日本にも到来
米国では、GoogleのSGE(AIによる概要表示)や、Perplexity AIのような「回答エンジン」の普及により、Webサイトへの流入減が深刻な課題となっています。しかし、この潮流は「英語圏だけの話」ではありません。日本のユーザー行動にも、既に不可逆的な変化が起きています。
生成AI利用者の4割が「検索回数減」を実感
まず、以下のグラフをご覧ください。これは生成AI利用者に「AIを使うようになってから、検索エンジンの利用頻度がどう変わったか」を尋ねた結果です。

- かなり減った(半分以下):14.7%
- ほとんど使わなくなった:6.0%
- 少し減った(2〜3割減):23.5%
調査の結果、合計38.2%(約4割)のユーザーが、GoogleやYahoo!での検索頻度を減らしています。「検索エンジンをほとんど使わなくなった(6.0%)」という層を含めると、約44%が「GoogleでWebサイトを探す」という行為から、「AIに答えを聞く」という行為へシフトし始めている実態が浮き彫りになりました。
Webサイトへの訪問頻度も3割が減少
さらに深刻なのは、検索回数だけでなく「Webサイトへの訪問頻度」自体も減少している点です。

同調査のQ8では、30.5%が「Webサイト(ニュース・企業サイト・ブログなど)を訪問する頻度が減った」と回答しています。
これは、メディアや企業サイトにとって「PV(ページビュー)至上主義」の限界を示唆しています。「検索エンジンで集客し、サイト内でコンバージョンさせる」という、過去20年以上続いたデジタルマーケティングの王道モデルが、根底から揺らいでいる事を意味しています。
2. リンクをクリックしない。「ゼロクリック」の常態化とAIへの信頼
なぜ、ユーザーは検索しなくなったのでしょうか? その答えは「ゼロクリック検索」の常態化にあります。
「検索順位1位を取ればPVが稼げる」というSEOの常識も過去のものになりつつあります。ユーザーは検索結果画面(SERPs)上でAIの回答を見て満足し、リンクをクリックせずに離脱する行動をとっているからです。
半数が「AI回答を見てサイトを開かない」

- よくある:13.5%
- たまにある:35.3%
- 計:48.8%
「AIの回答を見て、個別のWebサイトを開かずに済ませる」ユーザーは48.8%。約半数のユーザーが、Webサイトへのアクセスなしに自己解決しています。 これは「Perplexity」のような回答エンジンの台頭だけでなく、Google検索自体にAI概要(SGE)が実装され始めた影響も大きいでしょう。
なぜAIを信じるのか?「信頼度6割」の事実
かつて「生成AIは平気で嘘をつく(ハルシネーション)」と言われていました。しかし、ユーザーの意識は既に変化しています。この変化を支えているのは、AIに対する高い信頼感です。

Q11で「検索エンジンのAI回答に信頼性を感じますか?」と聞いたところ、以下の結果となりました。
- まあまあ信頼できる:53.8%
- 非常に信頼できる:6.8%
- 計:60.6%
6割を超えるユーザーが、AIの回答を信頼しています。 マーケターが「AIの情報は不正確だから、消費者は必ず公式サイトを確認するはずだ」と希望的観測を持っている間に、ユーザーは「完璧な正解」よりも「手っ取り早い納得解(タイムパフォーマンス)」を選び始めているのです。
3. 購買行動の主戦場はどこへ?「知りたい」と「買いたい」の分裂
「検索」と一口に言っても、「知りたい(情報収集)」と「買いたい(購買行動)」では、使われるプラットフォームが全く異なります。この違いこそが、今後のマーケティング戦略を分ける鍵となります。
(1) 「情報収集(Knowクエリ)」の王者は依然Googleだが、AIが追撃
まず、「何かわからないことがある時(Q1)」、ユーザーがどこで調べるかを見てみましょう。この「情報収集」の領域は、長らくGoogleの独壇場でした。

調査の結果、Googleが64.8%と圧倒的なシェアを維持しています。しかし、注目すべきは、ChatGPT(6.7%)やGemini(1.1%)など、AIサービスだけで約8%のシェアを獲得し、既に既存の検索エンジン(Yahoo!の22.6%)に次ぐ勢力として台頭し始めている点です。Googleの牙城は依然として堅いものの、「要約」というAIの特性を活かした侵食が始まっています。
(2) 「商品購入(Buyクエリ)」ではGoogleが大きく後塵を拝す
対照的に、「商品を探す時(Q2)」の購買行動のデータは、Googleにとって危機的な状況を示しています。

- Amazon:49.7%
- 楽天:25.7%
- Yahoo!ショッピング:8.9%
- Google:5.3%
商品検索において、GoogleはAmazonの約10分の1のシェアしかありません。これは、「購買意欲の高い検索(Transactional Query)」は、既にECモールが独占していることを意味します。
考察:マーケターが直面する「二重苦」
ユーザーの行動は、「情報収集(Knowクエリ):Google vs AI」と「商品購入(Buyクエリ):Amazon/楽天」に明確に分断されました。GoogleでのSEO対策だけを行っても、購買層には届かず、情報収集層にはAI回答(ゼロクリック)でブロックされてしまう──マーケターは、この「二重苦」の状況に対応する必要があります。
4. SNS検索の台頭:若年層に広がる「第三の検索チャネル」
Googleのシェアを脅かしているのは、生成AIだけではありません。「論理的な答え」をAIに求める動きと同時に、「感性やトレンド」をSNSで探す動きも若年層を中心に加速しており、Google検索はこれら2つの勢力による「挟み撃ち」にあっています。
なぜGoogleではなくSNSなのか?「信頼」の所在の変化
若年層がGoogle検索ではなく、YouTubeやInstagram、TikTok、X等のSNSで検索する背景には、情報に対する「信頼」の所在の変化があります。
かつては「企業の公式サイト」や「専門家の記事」が最も信頼されていました。しかし現在は、SEO対策されすぎた記事よりも、「動画で嘘偽りのない体験を語るインフルエンサー」や「利害関係のない一般ユーザーの口コミ(UGC)」の方が、よりリアルで信頼できると判断されています。「ググる」前に「タグる(ハッシュタグ検索)」、さらには「動画で確認する」という行動フローが定着しているのです。
データが示す若年層への偏り
「何かわからないことがある時(Q1)」の調査結果において、SNS(YouTube、Instagram、TikTok、X)を情報収集の主な手段として挙げた割合はわずか1.2%に留まっています。しかし、年代別に見るとその兆候は明らかです。

グラフの通り、10代〜30代の若年層では、他の世代に比べてSNSを検索として利用する割合が高いことが示されました。これは、将来的に購買力の中心となる世代において、Google検索のシェアが構造的に低下していく未来を示唆しています。
マーケターへの示唆:SNS対策は「AI対策」にもつながる
この「SNS検索」の増加は、AI検索対策(GEO)と無関係ではありません。むしろ、密接にリンクしています。
なぜなら、生成AIもまた、SNS上のトレンドや評判を学習データとして利用しているからです。
- SNS内SEO(ソーシャルSEO)の必要性: 若年層に見つけてもらうためには、SNS内の検索アルゴリズムを意識し、投稿に適切なキーワードやハッシュタグを含める対策が必要です。これは専門的には「VSO(垂直検索最適化)」とも呼ばれる領域ですが、要は「プラットフォームごとに好かれるお作法で発信する」ということです。
- AIへの波及効果: SNSで話題になり、多くの口コミ(UGC)が発生すると、それが「ネット上の評判」として蓄積されます。その結果、AIに「〇〇といえばこの商品」と認識されやすくなり、AI検索での引用や推奨が増えるという相乗効果が期待できます。
つまり、SNS対策を強化することは、目の前の若年層ユーザーを獲得するだけでなく、AI時代におけるブランドの「基礎体力」をつけることと同義なのです。
5. 覇権を握るのは?生成AI利用率とツールの現状
(1) 生成AIは「定着期」へ:利用率64%が示す利用の習慣化
まず、生成AIを使ったことがあるか(Q3)を聞いたところ、64.0%に達しており、もはや一部の技術者だけでなく、一般層に広く普及したことがわかります。

この64.0%という数字はすでに高い水準にあるものの、AIの活用が先行するアメリカなどと比較すると、日本市場にはまだ普及の余地が残されていると見られます。過去のテクノロジートレンドと同様、日本でも利用率は今後さらに上昇し、近い将来、大半の人々にとってAIが日常に不可欠なインフラとなる可能性が極めて高いことを示唆しています。これが一過性のブームではなく定着しつつあることは、続く利用頻度(Q4)を見れば明らかです。

最も多い層は「月2〜5回(32.2%)」ですが、「21回以上(18.4%)」といったヘビーユーザー層の合計も約47%と半数近くに上ります。つまり、生成AIはもはや一部のアーリーアダプターのツールではなく、ユーザーの日常的な情報処理プロセスに組み込まれつつあるのです。
職場でもプライベートでも。進む「AIの日常化」
普及の深度を知るために、仕事での利用状況(Q6)と、周囲の普及状況(Q9)も見てみましょう。

仕事での利用については、「毎日(13.7%)」「週に数回(20.1%)」「たまに使用(26.9%)」など、約6割がビジネスシーンでも活用しています。単なる遊び道具ではなく、生産性向上のツールとして企業内にも浸透し始めています。

また、家族や友人の利用状況(Q9)では、「ほとんどが使っている(9.4%)」「半分くらい使っている(14.9%)」「一部は使っている(30.3%)」など、身近な人々も使い始めていると感じる人が5割を超えています。これはマーケティング理論における「キャズム(普及の壁)」を超え、マジョリティ層へ広がり始めたことを示唆しています。
(2) 利用ツール内訳:ChatGPT一強と、追撃するGemini・Copilot

- ChatGPT:71.2%
- Gemini:39.4%
- Copilot:15.2%
- Perplexity AI:7.7%
依然としてChatGPTが圧倒的ですが、GoogleのGeminiも約4割のユーザーに使われています。特にGemini(39.4%)やCopilot(15.2%)は、Google検索やMicrosoftの業務アプリなど、普段利用する環境に密接に統合されています。そのため、わざわざ別のアプリを開くことなくスムーズにアクセスできる「利便性の高さ」がユーザーに支持され、日常的な選択肢としてのシェアを着実に拡大しています。
6. 今後のマーケティング戦略:SEOから「GEO(生成エンジン最適化)」へ
Google検索のボリュームが減り、AI利用が増える中で、我々はどう戦うべきでしょうか?

今後の検索手段(Q12)として、「検索エンジンとAIを使い分ける」「AIをメインにする」と答えた層は約4割に上ります。
ユーザーは、AIで概要を掴み、Googleで裏付けを取る、あるいはその逆を行う「ハイブリッド検索」を行っています。この変化に対応するため、米国の最先端マーケターは従来のSEO(検索エンジン最適化)に加え、「GEO(Generative Engine Optimization)」や「AIO(AI Overview Optimization)」と呼ばれる対策に舵を切っています。
このパラダイムシフトを生き抜くためには、今後は特に以下の3つの視点が重要になります。
【視点1】 ChatGPTはBing、GeminiはGoogle。「検索基盤」を意識したGEO戦略
アンケート結果からも分かる通り、ユーザーは複数のAIを使い分けています。ここで重要なのが、「各AIがどこの検索エンジンを参照しているか(バックエンド)」の違いです。
現在、ChatGPT(SearchGPT含む)やCopilotは、リアルタイム検索のソースとして「Microsoft Bing」を利用しています。一方、Geminiは当然「Google検索」を基盤としています。 つまり、これからのSEO/GEOは、Google一辺倒ではなく、以下の両面作戦が必要になります。
| ChatGPT・Copilot向け(Bing対策) | Bingの評価を高めるため、「Bing Webmaster Tools」への登録や、記事の更新を即座に通知する「IndexNow」の導入など、Microsoftのエコシステムを意識した技術的な最適化を行う。 |
| Gemini向け(Google対策) | Googleの強みであるショッピング・ローカル情報と連携するため、「Google Merchant Center」への商品データ登録や、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を強化したコンテンツ発信を行う。 |
【視点2】 「指名検索」されるブランドになるための評判(UGC)とエンティティ最適化
AIは、Web上のテキストデータを学習して回答を生成します。ここで重要なのは、単なる「評判の良さ」だけではありません。
「〇〇(サービスカテゴリ)のおすすめは?」と聞かれた時に、AIが迷わず貴社の名前を挙げるかどうか。 つまり、AIに「このジャンルの代表的な存在(エンティティ)」として正しく認識させることが極めて重要です。
これを実現するためには、自社サイトのコンテンツを充実させるだけでなく、SNSや外部メディア、業界地図などでの言及(メンション)を増やし、ブランド名とサービスカテゴリの結びつきを強固にすることで、「Share of Model(AIモデル内でのシェア)」を高める活動が不可欠になります。
【視点3】 AIの「引用元」となるための一次情報提供の徹底
AIが回答を作成する際、情報の信憑性を担保するために「引用元」のリンクを表示するケースが標準になりつつあります。
これはPerplexityやSearchGPTなどの対話型AIに限った話ではなく、Google検索の「AIによる概要(AI Overviews)」においても同様です。 AIは信頼できるソースを優先的に引用して回答を生成するため、ここで選ばれるためには、どこにでもある一般的な情報ではなく、「独自性の高いデータ」「一次情報」「専門家の見解」を発信し、AI側から「参照すべき信頼できるサイト」として認識される必要があります。
【無料ダウンロード】AI検索の行動変容に関する年齢別データシート
回答者の年齢別の属性データをまとめた全3問のデータ分析レポートをご希望の方はこちらからホワイトペーパーをダウンロードいただけます。
専門的な分析や施策の検討にご活用ください。 (ダウンロードページでは、氏名、メールアドレス等のご入力をお願いしております。)
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7. まとめ:AIに「選ばれる」存在へ
「検索されてクリックされる」時代から、「AIに学習され、引用される」時代へ。 今回の調査データは、そのパラダイムシフトが数年後の未来の話ではなく、「今、日本で起きている現実」であることを告げています。
検索ボリュームの減少を嘆くのではなく、新たな流入チャネルとしての「AI」に向き合うこと。BingやGoogleといった検索基盤の特性を理解し、AIに信頼される情報発信元となること。それが、2025年以降のデジタルマーケティングにおける勝負の分かれ目となるでしょう。
「AIに選ばれる」ための対策、まずは診断から
本記事で解説した「GEO(生成エンジン最適化)」や「AI検索での評判形成」は、従来のSEOとは異なる技術やノウハウが必要であり、変化の激しいAIアルゴリズムに合わせて自社だけで対策し続けるのはハードルが高いのが現状です。
デジマ部を運営する株式会社シードでは、国内でもいち早く「AIO(AI Overview)・GEO対策サービス」を開始しました。
- 現状、AIに自社ブランドがどう認識されているか知りたい
- AI回答での引用(サイテーション)を増やしたい
- 「指名検索」を増やすための評判形成を行いたい
このような課題をお持ちの企業様は、ぜひ下記ページよりサービス詳細をご覧ください。貴社の状況に合わせた最適な「AI検索対策」をご提案いたします。
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